公正証書遺言の内容に納得がいかない|無効にすることは可能?
遺言で特に信頼性が高いとされるのが「公正証書遺言」です。
公証人が関与して作成するため、形式上の不備で無効になる心配がほとんどありません。
しかし相続人の立場からすると「特定のひとに偏っていて不公平だ」「本当に本人の意思なのか疑わしい」といった不満や疑問を抱くケースも少なくありません。
今回は、公正証書遺言が無効となり得るケースや、実際に内容を争う方法を見ていきます。
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証役場で公証人が遺言内容を確認し、法律に従って作成するものです。
原本は公証役場で保管されるため、改ざんや紛失の心配がありません。
公正証書遺言は、最も確実性の高い遺言方法ですが、それでも無効とされる余地が残されています。
具体的には、「形式的要件」「実質的要件」のいずれか、もしくは両方を満たしていない場合です。
要件 | 説明 |
形式的要件 | 法律で定められた形式・様式になっているかどうか |
実質的要件 | 遺言者本人の真意に基づいて作成されているなど、遺言を作成するうえでの障害がないかどうか |
いくら形式を整えても「本人の意思がなかった」と判断されれば無効になる可能性があります。
公正証書遺言が無効になるケース
公正証書遺言が無効になるのは、以下のようなケースです。
- 遺言者に判断能力がなかった場合
- 脅迫や詐欺によって作成された場合
- 公証人・証人の関与に瑕疵があった場合
- 口授の要件をみたさなかった場合
それぞれ確認していきましょう。
遺言者に判断能力がなかった場合
遺言は、遺言者に「意思能力」がなければ有効になりません。
たとえば、認知症が進行して意思判断ができない状態で作成された場合には、その遺言は無効と判断される可能性があります。
実際には、医療記録や介護記録を証拠として提出し、当時の判断能力の有無を争うことになります。
脅迫や詐欺によって作成された場合
脅迫によって望まない遺言を書かされたり、事実と異なる情報を与えられて誤解のもとで作成したりした遺言は、無効になる場合があります。
公正証書遺言の場合、公証人や証人が関与しているため発生しにくいですが、完全に可能性を排除できるわけではありません。
公証人・証人の関与に瑕疵があった場合
以下のようなケースが該当します。
- 証人の欠格事由(未成年者や利害関係者が証人になったなど)がある場合
- 公証人の手続きに重大な瑕疵があった場合
上記のような場合には形式的に有効とはいえず、無効を主張できる可能性があります。
口授の要件をみたさなかった場合
公正証書遺言では、遺言者が「口授」(公証人に対して自分の言葉で内容を伝えること)をする必要があります。
もし口授が正しく行われなかった場合、その遺言は無効と判断される可能性があります。
具体的には、以下のようなケースです。
- 遺言者が文字を指し示すだけで口頭で意思を表明しなかった
- 声が出せない事情があるのに適切な代替手段を用いなかった
遺言者の意思が公証人に「直接」伝わらなかったと評価されると、公正証書遺言の効力は認められません。
口授の要件は、遺言者本人の真意を担保するための重要な形式的要件です。
まとめ
公正証書遺言は形式的に最も確実な遺言方法ですが、それでも無効を主張できる可能性があります。
ただし不公平だからといって、すぐに無効になるわけではなく、遺留分侵害請求など別の制度で対応しなければならない場合もあります。
もし公正証書遺言の内容に納得がいかないと感じたら、早めに弁護士へ相談してください。
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